溺愛誘拐犯にデレてみたのに(1)…感想とレビュー
読み終えた直後から、脳内をアサダさんの甘い囁きと、健太郎くんの困り顔がぐるぐる回っています。これは…沼だ…! 61ページというコンパクトなボリュームながら、ぎゅっと詰まった濃厚な内容で、あっという間に読み切ってしまいました。正直、もっと読みたかった!という余韻がハンパないです。
誘拐…だけど、なんだかキュンとする展開
「誘拐」という衝撃的なタイトルとあらすじに、最初はちょっと引っかかりました。正直、暗い展開になるのかな?と覚悟していました。でも、杞憂でした。アサダさんの、健太郎くんへの歪んだ愛情表現は確かに「怖い」の一言では片付けられないけれど、どこかコミカルで、そして… surprisingly、可愛らしいんです。
眼球フェチという、かなり特殊な性癖が設定されている時点で、覚悟は必要ですが、それが決してグロテスクに描かれていないところが素晴らしい。むしろ、アサダさんの健太郎くんへの執着が、彼の灰色の瞳への純粋な憧れから来ていることが丁寧に描かれているので、嫌悪感よりも、切ない気持ちの方が大きくなります。
健太郎くんの飄々とした魅力
健太郎くんは、バイト暮らしで不特定多数の女性と関係を持つ、いわゆる「ヒモ」。決して好感度が高いとは言えないキャラクター設定ですよね。でも、彼の飄々とした性格と、どこか抜けているところが、妙に魅力的なんです。アサダさんの過剰な愛情表現に翻弄されながらも、自分のペースを崩さない、その図太さがまた良い。彼自身が、アサダさんの異常さに気づいていないのか、気づいていてもあまり気にしないのか、その辺りの描写が曖昧なところも、彼の魅力をさらに増幅させています。
アサダさんの狂気と愛情の狭間
アサダさん、彼は間違いなく狂っています。健太郎くんを誘拐する時点でアウトです。でも、その狂気の中に、健太郎くんへの純粋な愛情が感じられるんです。それは、束縛や所有欲といったネガティブな感情ではなく、彼にとっての「理想の恋人」像を健太郎くんに投影し、彼を手に入れたいという、切実な願望からくるものだと解釈できます。
彼の行動は決して許されるものではありませんが、その行動の根底にある感情に共感してしまう自分がいるのも事実。そこが、この作品が単なる「危ない話」ではなく、胸を締め付けられるような、切ないBL作品になっている所以だと思います。
理想のヒモ生活と現実のギャップ
健太郎くんは、アサダさんとの同居を「理想のヒモ生活」と捉えています。家賃と生活費を負担してくれる上に、自分のペースで自由に過ごせる…まさに、彼の望む通りの生活です。しかし、現実のアサダさんとの生活は、想像をはるかに超えるものでした。
このギャップが、物語に面白味を与えています。健太郎くんの「適当」な性格と、アサダさんの過剰な愛情表現がぶつかり合うことで、コミカルな展開が生まれるだけでなく、健太郎くんの心の変化や、アサダさんの複雑な感情が繊細に描かれています。
61ページの濃密な時間
短いながらも、各キャラクターの心情や、物語の展開が非常に丁寧に描かれていて、61ページというボリュームが全く物足りなく感じませんでした。むしろ、この長さだからこそ、読後感の良さにつながっていると思います。
今後の展開が非常に気になります。アサダさんの行動は、健太郎くんにとって本当に「理想の生活」と言えるのか?健太郎くんは、アサダさんの愛情にいつまで気づかないフリができるのか? そして、二人の関係はどのような未来を迎えるのか?…続きが待ち遠しいです!
全体的な評価
「溺愛誘拐犯にデレてみたのに(1)」は、独特の世界観と、魅力的なキャラクター、そして絶妙なバランスで描かれた狂気と愛情が、読者を惹きつける素晴らしい作品です。 一見すると、危険な要素を含むストーリーですが、繊細な描写と、テンポの良い展開によって、最後まで飽きることなく読むことができました。
BL好きはもちろん、少し変わったBL作品を読んでみたいという方にも、自信を持っておすすめできる一冊です。 61ページという手軽さも魅力の一つ。 ぜひ、一度読んでみてください! そして、アサダさんと健太郎くんの、先の展開にドキドキしながら待ちましょう!