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【BL漫画・BLコミックレビュー】しじまディスコミュニケーション(上)

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しじまディスコミュニケーション(上)レビュー:静寂と騒音の交響曲

この作品、一言で言うと「胸が締め付けられるほど切ない!」です。表紙のイラストから漂う静謐な空気感、そしてタイトルの「しじまディスコミュニケーション」という言葉から想像する、どこかぎくしゃくとした二人の関係性。読み進めるにつれて、その想像をはるかに超える、複雑で繊細な感情の渦に巻き込まれていきました。

正反対の二人、そして歪んだ絆

優等生で寡黙な静寂(しじま)と、不良で騒がしい奏(かなで)。正反対の性格の二人は幼馴染で、お互いに深く信頼し合っている……はずなのに、二人の間には目に見えない壁が存在しているように感じます。言葉にならない感情、伝えきれない想いが、コマとコマの間、セリフとセリフの間に、静かに、そして力強く表現されています。特に、静寂の微妙な表情の変化や、奏の言葉の裏に隠された感情が、作者の圧倒的な描写力によって鮮やかに浮かび上がります。

静寂がストーカー被害に遭っているという設定も、二人の関係性を複雑に絡み合わせる重要な要素になっています。事件を通して、二人の距離は近づきつつあるのに、同時に、互いの気持ちを素直に伝えられないもどかしさが増していきます。犯人捜しという共通の目的が、二人の関係に新たな変化をもたらすのか、それとも、より深い溝を生み出してしまうのか。ハラハラしながら読み進めました。

美しい画力と繊細な描写

このマンガの一番の魅力は、なんと言っても作者の圧倒的な画力です。静寂の繊細な表情や、奏の力強い身体つき、そして二人の間の微妙な距離感まで、全てが細密に描かれています。特に、静寂の瞳に映る景色や、奏の乱れた髪の一筋など、細かい描写に作者の強いこだわりを感じます。背景も美しく、登場人物たちの感情をより一層引き立てています。

また、セリフだけでなく、コマ割りや効果線の使い方が絶妙で、読者の感情を巧みに操ってきます。静寂と奏の会話のないシーン、二人の間の沈黙は、言葉以上に多くのことを語っていて、見ているこちらが息苦しくなるほどでした。読み終わった後も、二人の表情や、その間の空気感が脳裏に焼き付いて離れません。

予想外の展開と、残された謎

「しじまディスコミュニケーション(上)」は、単なるミステリーではありません。犯人探しを通して、静寂と奏の複雑な関係性、そしてそれぞれの心の闇が少しずつ明らかになっていきます。予想外の展開も多く、終始ドキドキしながら読み進めました。しかし、上巻はあくまで序章。物語は重要な局面を迎えたところで終わっており、結末を知りたいという強い欲求が募ります。

特に、二人の関係を見つめる第三者の存在。その人物の正体や目的は、今のところ謎のままです。この謎が、下巻への期待感を大きく高めてくれます。

読後感:余韻と期待

読み終えた後の余韻が半端ではありませんでした。静寂と奏、そして周囲の人物たちの心情が複雑に絡み合い、まるで一つの交響曲のように感じます。それぞれのキャラクターの心情が丁寧に描かれているため、単なる「BL」作品としてだけでなく、「人間ドラマ」としても深く味わうことができました。

静寂と奏の関係性が、今後どのように変化していくのか、そして、彼らの前に立ちはだかる壁をどう乗り越えていくのか。彼らの行く末を案じつつ、下巻の発売を心待ちにしています。

総評:★★★★★(5つ星)

「しじまディスコミュニケーション(上)」は、美しくも切ない、そして息を呑むほどスリリングな作品でした。画力、ストーリー、キャラクター、全てにおいて圧倒的なクオリティで、久しぶりに心揺さぶられるBLマンガに出会えたと感動しています。BL作品が好きな方だけでなく、人間ドラマに興味のある方にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。上巻で描かれた謎が、下巻でどのように解き明かされていくのか、今から楽しみで仕方ありません。 この先、二人の関係がどう変化し、そして結末を迎えるのか、想像するだけで胸が熱くなります。

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